「この方法でダメだったら、ずっと畑を手放せないと思った。正直、ホッとした」
千葉県内に住む男性(59)はそう話す。農業を営んでいた父が86歳で2018年に亡くなり、6筆の農地を相続。農業を継がず、会社員生活を送っていた男性にとって、使い道に困る土地「負動産」だった。
うち5筆は近くの農家が引き取ってくれ、自宅から車で5分ほどの1筆だけが残った。初夏から秋に草がすぐに生い茂り、草刈りが重荷になっていた。
農地取引には地元の農業委員会の許可が必要で、宅地のように簡単には売れない。さらに、大正時代に祖父が取得したこの土地は、当時の事務手続きのミスからか、土地の形や位置を記した公的な図面(公図)がない。処分がむずかしくなる悪条件が重なっていた。
頼みの綱として男性が使ったのが、国に引き取ってもらう方法だ。
相続した土地、53万円で国へ引き渡し
相続土地国庫帰属制度と呼ば…